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インタビュー

酒造インタビュー#4
大和川酒造店・佐藤さん 2015.07.24

酒造インタビューの第三弾は、ラーメンの聖地・喜多方で完全な自給自足の酒造りを目指す大和川酒造店・専務の佐藤雅一さん。

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全国で類を見ない、完全なる自給自足とは


—— 大和川酒造店が目指す自給自足の酒造りとは何ですか?

地元のお米とお水を使ってお酒を醸している酒造は全国に多くありますが、大和川のゴールは更に先にあります。それは、自らのお米、地元のお水と蔵人たちの技術に加え、9代目の父 (会長) が震災後に立ち上げた電力会社の太陽光エネルギーを使う、本当の意味での自給自足の酒造りです。これが実現できれば、一つの面白いストーリーになるのではないかなと思っています。全国で唯一になりますからね (笑) 。

—— お米作りを行っている大和川ファームについてお聞かせください。

大和川ファームが始まって今年で15年目になります。当初と比べて三倍以上大きくなり、およそ35ヘクタールの田んぼでは酒米だけではなく、飯米も作って販売しています。

酒米作りはなかなか難しいですね。今となっては良い山田錦も育つようになりましたが、作り始めの頃は全然ダメでした。米が育っても粒が小さかったり、青かったり。最近は経験値が上がったことに加え、喜多方の気候が山田錦が育ちやすい気候になってきたので、良い山田錦ができるようになりました。大和川ファームで育った山田錦を使ったお酒で全国新酒鑑評会の金賞も獲れるようになってきたので、今までやってきた甲斐があったなと感じてます。

—— 大和川酒造店といえば今年から実質兄弟体制に入っていますが、その強みとは何ですか?

私が営業を担当して、今年から弟が杜氏を務めています。以前いた別の造りの人間が辞めたタイミングでたまたま弟が酒造に戻ってきて、文字通り一からのスタートとなりましたが、この7年間、弟は熱心に努力を重ねました。ここ5年連続で全国新酒鑑評会の金賞を穫れたのも、真面目に勉強した賜物なのかなって思いますね。

言い方はおかしいかもしれないですけど、兄弟で酒造を引っ張っていくのは様々な意味で便利だなと思ってはいます。やはり血が繋がっている間柄だと、詳細を話さなくても必然的にお互いが同じ方向を向き、お互いを理解し合えるような、そんな雰囲気はありますからね。これは他の酒造でやろうと思ってできることではないですよね。たまたま酒屋に生まれて、たまたま兄弟がいて、たまたま兄弟とも家業をやっている酒造は、全国を見回してもとてもレアだと思います。実は、我々の上の世代である父(会長)と叔父(社長)も同じように兄弟で営業と造りに分かれていましたので、その関係をまた我々で同じようにできるというのも珍しいし、ありがたいですよね。

今後の大和川の三本柱


—— 大和川酒造店の主軸銘柄についてお聞かせください。

大和川のお酒の中で圧倒的な人気を誇っているのが『純米辛口 弥右衛門』です。それと昔から代々伝わってきた『純米カスモチ原酒 弥右衛門』も非常に特徴的なお酒です。

もともと会津はしょっぱい乾物中心の料理が多かったので、それに合う甘いお酒が多くありました。特に大和川は新潟に抜けていく峠の手前の街道に位置しているので、峠を超える方たちが立ち寄って『カスモチ』を飲んでいました。アミノ酸もたっぷり入っているので、健康ドリンクの役割を果たしていたのですね。今は消費者の志向が辛口になってきているので、今後は『カスモチ』の提供の仕方も重要になってくると考えています。例えばロックで飲んでもらったり、ギンギンに冷凍庫で冷やすことで甘味をキリっとさせてから飲んでもらったり、合う料理と一緒に飲んでもらったり、ですね。

新しくスパークリングの『純米大吟醸 弥右衛門 珠泡』も誕生させたので、それを第三の柱として育てていきたいです。

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クラブで日本酒を飲むぐらいの広がりが欲しい


—— 日本酒をあまり飲まない人たちはどういう風に日本酒を楽しむのが良いと思いますか?

まずは日本酒を数あるお酒の中の選択肢の一つとして捉えてもらいたいです。私自身、日本酒以外のお酒も好きなので、皆さんに必ずしも日本酒だけを飲んでもらいたいというわがままを言うわけではありません。

とは言え、やはり日本人の体にはお米が合うのだと思ってもいます。日本酒を飲むと、「あー、これこそ日本人だな」と思えるんです。それは味だけでなく、文化的要素も含まれているからだと思います。日本の文化が日々進化しているように、日本酒を取り巻く環境も広がりを見せるべきだと思います。浴衣で日本酒を飲むのも素敵ですし、クラブで飲むこともありだと思います。色々な場面で日本酒を目にする機会が増えると、普段あまり飲まない人たちも手を出しやすくなるのではないでしょうか?

—— 佐藤さんの思う理想の日本酒像とはなんですか?

日本酒は美味しいという前提のもとに自然と飲まれて、皆さんの楽しい時間を作りあげる、というのが理想です。正直理想の味はありません。美味しいということが前提には有りますが、むしろ場面のほうが重要だなと最近では考えています。好きな日本酒の味はありますが、それはあくまでも個人的なものであって、皆さんにとっての理想にはなり得ないからです。いろいろな味のお酒を楽しめる場所を作ること、それが理想です。


大和川酒造店     — 目指すは、自社の米、水、そしてエネルギーで醸す完全自給自足の酒。 —